(▲春にセットした産卵の容器をひっくり返した様子)
昨年の秋にお客様より無添加産卵マットのみで国産オオクワガタが普通に産卵するというお電話をいただきました。
直ぐに試してみたかったのですが、冬場は加温を行っても産卵効率が落ちるので、春になるのを待って(少し早いですが)2月下旬に産卵セットを組み1ヶ月後の本日、割り出しを行いました。
産卵の床(とこ)が硬い朽木ではなく、柔らかいマットだけなので親メスによる子(幼虫)の捕食のリスクを回避する為、孵化するタイミング(かなり早め)に割り出しを行いました。
まず、マットのセッティング方法から説明したいと思います。
【マットのみ産卵のセット方法】
マットのみの産卵方法は、至ってシンプルでコバエ防止飼育ケース(中)に無添加虫吉産卵用マットを入れて木製マットプレスで朽ち木に見立てて固く詰めるだけです。
※マットは、2袋あれば十分に足ります。
なお、最低でも厚さ(高さ)が10センチ以上の固めた部分の層を作る必要があります。
補足ですがコバエ防止タイプのケースを使用しなければ、どこからともなくキノコバエ(黒くて小さなコバエ)が侵入して部屋中にコバエが蔓延する確率が上がります。
可能であれば画像の様にコバエ防止ケースに専用フィルターシールを貼るなどしてコバエ対策を行なっていただく事を推奨します。
▼▼それでは、手順の詳細を紹介します▼▼
一度に沢山のマットを入れてしまうとモッサリとしてしまい絶対に固く詰める事ができません。
そこでマットを詰める際は、袋の半分(2リットル)ずつ入れて複数回(3回)に分けてプレスする必要があります。
まず、最初の2リットルを入れます。
木製マットプレスを用いて最初の2リットル目のマットを入念に固く押し固めます。
しっかりと詰める事ができれば、2リットルで高さ約3センチ前後の固めた層になるはずです。
メスが潜り進んだ際に緩むと絶対に産卵しないので、かなり強めに詰める必要があります。
詰める際にケースが割れない様、下に段ボールや玄関マットなどを敷いて行うと良いです。
また、事前にケースの底に透明の梱包用テープを十字貼りしておくと補強になります。
最初の2リットルを固め終わったら4リットル目を入れます。
この時点で1袋(4リットル)を使い切る事になります。
マットの量が増えてゆくと少し高さが出てきて詰めにくいですが頑張って詰めてください。
2回目(マット4リットル)のプレスが完了した時点で約7センチ前後の固い層が出来上がるはずです。
6リットル目のマットを容器に入れます。
この時点で1袋半(1.5袋)のマットを使うことになります。
6リットル目(最後)のプレスを行っています。
ここまでの3回のプレスは、絶対に弛まない様にしっかりと行う必要があります。
画像では、少し分かりにくいですが3回目のプレスが終わった時点で10センチ前後の層ができます。
固めた部分の上に少し(2から3センチくらい)のマットを足します。
最後の部分は押さえ付けずに軽くてで平にするだけで大丈夫です。
10センチ以上の高さにプレスすると酸欠を起こしやすくなるので絶対に避けてください。
足場を確保する為にクヌギの落ち葉を多めに入れます。(樹皮でも構いません。)
※産卵木(朽ち木)を使用しないので、足場や隠れ家の代わりに必要です。
これでセット完了です。
飼育ケースには、オスとメス(ペア)で入れても、別ケースで予めペアリングさせたメスだけを入れても、どちらでも構いません。
※オスは、基本的に潜る事ができないので固い層を破壊してしまう事が無い様です。
(それ以前に緩いと産卵しませんが)
画像は、2024年2月24日に上記の内容で組んだオオクワガタの産卵のセットです。
餌は、産卵に適したプロゼリーもしくは、ホワイト高タンパクゼリーを与えています。
クワガタの場合、産卵時期に関わらず、防腐剤や発色剤が入っていない高タンパク系の餌を与え続ける事で良いコンディションを維持して産卵効率をアップさせる事が可能です。
★因みにケースの縁に貼った白いテープは、コバエ防止効果を更に高める為に編み出したマル秘テクニックです。
余談ですがコバエ防止ケースにコバエ防止フィルターを貼り、更に縁にビニールテープを貼り、メッシュタイプの洗濯ネット(60センチ)の中に入れるとコバエの蔓延を防止できます。
ケースの側面から卵が見えます。
ヒラタやノコギリは、ケースの底を覗き込むと沢山の卵が見える事が多いのに対し、オオクワは、やや底に近い部分の固めた層に産卵している感じでした。
容器の側面から見える孵化して間もない小さな初齢幼虫です。
ケースの底のマットを食べている初齢幼虫です。
流石に1ヶ月経過すると糸状の菌糸が張っていますが特に問題はございません。
マットの中から出てきた卵と孵化した直後の初齢です。
今回は、親メスを回収する為の早めの割り出しにつき、ほとんどが卵か孵化して間もない状態ばかりでした。
今回の産卵セットの割り出しの結果は、卵(孵化直後も含む)が17、初齢幼虫が3の合計20です。
※卵は、写真撮影の為に一時的にカップに入れています。
初夏の本格的な産卵シーズンの前でしたが、マットだけでも想像以上の結果が出ました。
2024年4月3日追記:ブログ公開後に他のオオクワガタのマットのみの産卵セットを割り出したところ、今回よりも多い28匹の幼虫が出てきました。
なお、卵はカップのまま保管すると孵化率が落ちるので元の容器にマットと一緒に埋め戻して管理しています。
その状態で約4週間から1ヶ月後に再度ひっくり返して幼虫を回収する予定です。
幼虫は、無添加プレミアム虫吉マットで4から7日ほど養生させてからクヌギ菌糸ビン500ccに入れる予定です。
今後も引き続き、オオクワガタのマットのみ産卵の実験や考察を行ってみたいと思います。
なお、一般的には、産卵木を用いた産卵方法が主流なのですが今後は、高齢化による林業(椎茸の原木栽培)の衰退で朽ち木の流通が少なくなる事が危惧されていますのでマットのみで産卵するのであれば、ホームページの情報も令和バージョンにアップデートする必要がありそうです。