離島産のヒラタクワガタの仲間の春から初夏の羽化や個体の紹介

週末の九州北部は梅雨入り前のぐずついた天気になっていましたが、今日は晴れのクワガタの採集日和です。

今回は、本格的な夏のシーズンに先駆けて羽化した離島産のヒラタクワガタの仲間を紹介したいと思います。

オキナワヒラタクワガタ66ミリ

まず最初は、2024年4月上旬に羽化したオキナワヒラタクワガタ(沖縄県国頭郡国頭村産)66.9ミリのアゴが太くてガッチリ系の大型個体です。

昨年の夏に夏に入荷した天然採集品のメスを産卵させて生まれた幼虫を育てました。

ヒラタクワガタの仲間の産卵方法

幼虫飼育場の温度は、20から23℃の範囲内で管理しています。

■エサ交換のリレーは下記のとおりです。

・1本目(2023年9月10日、二齢):ブナ遮光菌糸ビン500cc

・2本目(2023年11月23日、終齢):遮光マットボトル800cc

→2024年3月10日に蛹化を確認したので3本目の交換無し。

2本目からは、菌糸ビンの暴れを防いで交換頻度を抑える(交換痩せを防ぐ)為に菌糸ビンからマットへの切り替え飼育を行っています。


マットボトル800ccの説明

マットボトルとは、無添加虫吉幼虫用マットをボトルに強く詰めた商品の事です。

添加剤を一切加えずに発酵させた昆虫マットなのでボトル内で残留添加成分の腐敗によるガスや発酵熱が発生しないので幼虫に安心です。

劣化が遅いのでヒラタクワガタの仲間でも3から4ヶ月に1回の交換で済みますので、幼虫の交換時のストレス痩せのリスクを軽減できます。


オキナワヒラタ66ミリの大アゴ

先程のオキナワヒラタ66ミリの大アゴの画像です。

大アゴの内歯が下に付きます。

太くて短い大アゴの先端が内側に大きく湾曲する刺激的な形です。

この個体の兄弟は、基本的にアゴが太くてかっこ良い個体が多いです。

※基本的にオキナワヒラタは、大アゴのラインが弧を描く様に湾曲する特徴があります。


オキナワヒラタ(久米島産)67ミリ

こちらは、4月下旬に羽化したオキナワヒラタクワガタ(久米島産)67.9ミリの大型個体です。

ガッチリとした良形個体です。

■エサ交換のリレーは、下記のとおりです。

・1本目(2023年9月1日、二齢):ブナ遮光菌糸ビン500cc

・2本目(2023年11月23日、終齢):遮光マットボトル800cc

→2024年3月22日に前蛹(蛹の前段階の幼虫)になっていたので4本目の交換無し。

クワガタの卵から羽化までの成長過程の紹介

オキナワヒラタ(久米島産の大アゴ)

先程の久米島産67ミリの大アゴの画像です。

大アゴの先端付近が急角度で内側に鋭く湾曲(カーブ)しているカッコ良い個体です。

自然界のオキナワヒラタは、小振りな個体が多く、パッとしませんが、繁殖品の大型個体は、独特の迫力があります。


サキシマヒラタクワガタ73ミリ

こちらは、沖縄本島から南西に400キロメートル(東京から大阪までくらいの距離)ほど離れた石垣島(崎枝産)のサキシマヒラタクワガタ73ミリ(2024年5月8日羽化)です。

沖縄本島よりも台湾に近い島(台湾まで200キロメートルくらい)に生息するクワガタなので最初に紹介したオキナワヒラタとは、遺伝子の系統も異なり姿形だけでなく大きさも全く異なります。

昨年の夏に入荷した野外採集品のメスを産卵させて生まれた幼虫を育てて羽化させました。

■エサ交換のリレーは、下記のとおりです。

・1本目(2023年9月22日、二齢):ブナ遮光菌糸ビン500cc

・2本目(2023年11月30日、終齢):遮光マットボトル800cc

→2024年4月2日に蛹室内で前蛹になっているのを確認したので3本目の交換なし。

サキシマヒラタは、見かけの大きさに反して成長速度が早く(幼虫期間が短く)、羽化後の休眠期間も少し短めです。

※自然界では一次発生(初夏に発生)と二次発生(晩夏から秋に発生)の2つ発生時期がありますので、飼育下でも春から初夏までに羽化すると早期活動(早く成熟して夏に産卵可能になる)の傾向が強いです。

サキシマヒラタの大アゴ

先程のサキシマヒラタの大アゴの画像です。

今回の個体は、長歯(アゴが細長く内歯が上に付くタイプ)と短歯(アゴが太くて内歯が少し下に付く)の中間的な形です。

※基本的にヒラタクワガタの仲間は、長歯と短歯が存在してアゴや胴体が長い、短い、細い、太いなど個体差が非常に大きいです。

サキシマヒラタの場合、平均的に見て内歯が大アゴの真ん中前後に位置する個体が多いです。


トクノシマヒラタクワガタ72ミリ

こちらは、4月下旬に羽化したトクノシマヒラタクワガタ(徳之島町産)72.9ミリのオスです。

※因みに徳之島には、天城町、伊仙町、徳之島町の3つの町(共に鹿児島県大島郡)があります。

画像でパッと見た感じでは、先ほどのサキシマヒラタと似ている様に見えますが、実際は胴体の幅や丸みがあり重量感があります。

昨年の夏に入荷した野外採集品のメスを産卵させて生まれた幼虫を育てて羽化させました。

■エサ交換のリレーは、下記のとおりです。

・1本目(2023年8月25日、二齢):ブナ遮光菌糸ビン500cc

・2本目(2023年11月16日、終齢):遮光マットボトル800cc

→2024年3月14日に既に前蛹になっているのを確認したので3本目の交換なし。

※菌糸ビンは、劣化が早いので3ヶ月以内で交換を行っています。

1本目を引っ張ってしまうと終齢になって一番大きく育つ時期に古くなって劣化した菌床を食べてしまう事になるので早めに見切りをつけています。

トクノシマヒラタの大アゴ

先ほどのトクノシマヒラタの大アゴの画像です。

内歯は、大アゴの中心よりも少しだけ下に付きます。

内歯(大きな突起の先端部)の角度が微妙に下向き(やや横向き)になります。

後から紹介する奄美のヒラタに比べて大アゴのラインが若干、直線的で内歯の先端角度が少しだけ下向きです。


アマミヒラタクワガタ72ミリ

こちらは、4月最新羽化のアマミヒラタクワガタ(奄美市笠利町産)72ミリの大型個体です。

幅や丸みが強く、大アゴが太い良型個体です。

こちらも昨年の夏に入荷した天然採集品のメスを産卵させて生まれた幼虫を羽化させました。

■エサ交換のリレーは、下記のとおりです。

・1本目(2023年8月18日、二齢):ブナ遮光菌糸ビン500cc

・2本目(2023年11月9日、終齢):遮光マットボトル800cc

→2024年3月7日に既に前蛹になっているのを確認したので3本目の交換なし。

アマミヒラタの大アゴ

先ほどのアマミヒラタ72ミリの大アゴの画像です。

内歯は、大アゴの中間部よりも下(基部寄り)に位置します。

鋭く尖った内歯の先端部分がトクノシマヒラタよりも少し上を向きます。

太くて力強い大アゴのラインは、先端に向かって緩やかな弧を描き、下に向かって軽く湾曲する感じです。


(平面的な)画像だけでパッと見ると先島、徳之島、奄美のオスは、似ている様に見えますが実際は、遺伝子の系統関係が全く異なります。

この違いは、メスの方に顕著に現れますので簡単に紹介してみたいと思います。

サキシマヒラタのメス

サキシマヒラタのメスの画像です。

上翅には、ヤスリで傷を付けた様な無数の細かい点刻があり、狭い間隔で薄っすらとした縦筋が見えます。

遺伝子関係の分岐では、八丈島や本土(太平洋側)のヒラタに近いそうです。

沖縄や南西諸島のヒラタに比べるとオスが大型化しやすいのに対し、メスが少し小振りなサイズで、形が本土ヒラタに近いです。


トクノシマヒラタのメス

トクノシマヒラタのメスの画像です。

サキシマヒラタと比べて全体的に幅が広く、丸みがあります。

また、体長も一回り大きめの個体が多いです。

上翅は光沢が強く、薄っすらと太い縦筋が見えます。

遺伝子の系統関係は、お隣の奄美大島よりも沖縄方面のヒラタの方に近いそうです。

(沖縄のヒラタは、丸みがあって光沢が強いので何となく頷けます。)


アマミヒラタのメス

アマミヒラタのメスの画像です。

トクノシマヒラタのメスと同様に丸みが強く、体長も大きくなる傾向があります。

※徳之島と奄美のメスは他の地域の亜種よりも一回り大きめです。

上翅には、はっきりとした縦筋があり、筋と筋の間には、無数の目立つ点刻がありますので側面付近の光沢が鈍く見えます。

余談ですが奄美大島に生息するクワガタは、何故かメスの上翅に筋や点刻が目立つ種類が多いです。
(ヒラタ、ノコギリ、コクワ、スジブト)

遺伝子の系統関係は、徳之島ではなく宝島のヒラタの方に近いそうです。(勿論メスも似ます。)


メスの比較や紹介で本題から逸れてしまいましたが、最新羽化のオスの情報に戻ります。


ツシマヒラタクワガタのオス76ミリ

こちらは5月20日に羽化したばかりのツシマヒラタクワガタ(対馬市上県(かみあがた)町産)76ミリです。

胴長短足に見えてしまうほど、体型が長細く、アゴも長い長歯型です。

■エサ交換のリレーは、下記のとおりです。

・1本目(2023年10月20日、二齢):ブナ遮光菌糸ビン500cc

・2本目(2024年1月18日、終齢):遮光マットボトル800cc

→2024年4月29日に既に蛹になっているのを確認したので3本目の交換なし。

ツシマヒラタのオスの大アゴ

先ほどのツシマヒラタの大アゴの画像です。

直線的な長い大アゴの付け根(基部)に近い場所に内歯が付き、その上に無数のノコギリ状の小歯があり、先端付近に釣り針の返しの様なカギ歯があります。

刺激的な形ですが実は、この特徴が出るのは長歯型だけです。

対馬や壱岐などの日本海側の離島産ヒラタにも短歯型(アゴが太短いタイプ)が存在する事が知られており、実際はアゴの長短の個体差が大きいです。

※なお、短歯の場合は、別のページに分けて販売しています。

これから本格的にシーズンに入りますので、面白い情報があればお伝えしたいと思います。