菌糸ビンの『暴れ』について
クワガタの幼虫の菌糸ビン(菌床)での飼育で良く起こってしまう『暴れ』という僅少の掻き混ぜ現象についての解説です。
暴れを放っておくと幼虫が縮んでしまうだけでは無く羽化不全や成虫にならないリスクが増えます。
特に直前に使ってい菌糸ビンは、2から3ヶ月して白い部分が無くなっていたのに新品に交換した途端に数日から数週間で茶色くなってしまったという場合は注意が必要です。
下の2つの画像は暴れを起した菌糸ビンです。
こちらの写真は、終齢幼虫を菌糸ビンに投入して直ぐに暴れ始めた様子です。
投入後に数週間経過してサナギになる直前で急に暴れてマットの様になってしまった菌糸ビン。
(写真右の状態になると蛹室内が水っぽくなり羽化不全の確率が上がってしまいます。)
下の画像は、幼虫が綺麗に食べ切った菌糸ビンです。
慣れないと写真では判断がつきにくいのですが、1.5~3ヶ月間ゆっくり時間を掛けて食べて画像の状態になっています。
解り易く言い換えると数日~1週間で白い部分がなくなると『暴れ』の確率が高いです。
では、どのような状態の時に暴れが発生しやすいかの解説です。(ただし、個体差にもよります。)
1、幼虫が成熟して菌糸ビンに適応しなくなった時。
クワガタの幼虫は、初齢の時は菌糸を好む物が多いですが終齢になると菌糸が強いオガクズ(朽ち木)を嫌う物もいます。
ノコギリやヒラタの仲間が典型で自然界では、終齢幼虫に近付くと地中の腐葉土質になった朽ち果てた枯れ木の方を好む様になります。
上記の2種類の場合、飼育下では雌雄や生育状況、飼育温度にもよりますが1~2本(メスは最初の1本目の菌糸ビン550cc)までしか菌糸ビンを与えない方が良いです。※羽化不全や暴れが多くなります。
終齢幼虫(成熟して黄色くなった状態)も飼育下では、栄養価が高い菌糸ビンに合わずに暴れ始める事が有ります。
またサナギになる時期が近付いた時にも投入後1.5ヶ月以上経過して急に暴れ始める事が有ります。
以下の画像の状態になっていれば菌糸ビンからマット飼育への切り替えでも上手く成虫になります。
黄色くなった終齢幼虫末期(成熟期)です。
暴れてから1から2週間ほど経過して蛹室と呼ばれる蛹の部屋(空洞)を作っていなければマット飼育をお勧めします。
・ヒラタやノコギリは無添加幼虫用マット。
・オオクワやコクワ、アカアシはオオクワマットになります。
国産の種類の場合は、基本的に850ccボトルで十分です。
終齢末期に近付いた幼虫。
体の内側付近のくびれが少し黄色っぽくなり始めてます。
特にヒラタやノコギリの仲間もマット飼育に切り替えないと暴れやすくなってしまいます。
2、温度が高い時や酸欠で嫌がっている時
幼虫の暴れは、主に終齢幼虫の時に起こりやすいです。
上記の様に『暴れ』は幼虫が成長して菌糸ビン飼育に適し無くなった個体のケースの他に高温時や酸欠でも起こってしまいます。
菌糸ビンは、キノコの菌の塊で絶えず呼吸をしています。
その為に菌糸ビンの中には、菌糸+幼虫に必要な酸素が必要です。
(30gを越える大型幼虫は通気口が大きな菌糸ビン1500ccをお勧めします。)
温度が上がった時や幼虫が潜った後のオガクズを白く再生する為に大量の酸素を消費します。
その時に酸欠を起しやすくなり幼虫が暴れてしまう事も有ります。
冬場の加温の際に投入直後に温度を高め(20℃以上)に設定されると加温方法や気候、時間帯で部分的に設定温度よりも高くなってしまう事が多くなります。
それに伴い菌糸やバクテリアの急激な活性の影響で酸欠や発熱を起こして『菌糸ビン』『マット』を問わず幼虫が暴れてしまいます。
回避策として以下の方法も有ります。
市販のキッチンペーパー(写真上)を菌糸ビンのキャップの代わりに輪ゴムで止めています。
酸欠防止の為に沢山の酸素を取り込ませる方法です。
投入後2~3日後に幼虫が落ち着いたらキッチンペーパーを外して専用のキャップ(写真右の白くて丸い物)を閉めてください。
(長く続けるとカビやコバエの侵入の他に乾燥の原因になります。)
菌糸ビンは暑さに弱いので夏場は25℃前後(30℃を越えない)の場所での飼育をお勧めします。
(30℃を越えると幼虫の死亡率が上がります)
冬場に加温されている場合は、ボトルに幼虫を投入した直後は20℃前後の温度で落ち着くまで様子を見てください。
3、菌糸ビンが古くなって劣化が始まった時。
菌糸ビンは使用、未使用に関わらず絶えず中身の菌糸がオガクズを分解していますので2から3ヶ月で見た目は綺麗でも水っぽくなってしまい幼虫飼育に適さなくなってしまいます。
この状態になると幼虫が嫌がって暴れ始めてしまいます。
また、古い菌糸ビンの使用は幼虫の病気やトラブルの原因になる事も有ります。
因みに当店で販売している菌糸ビンは、詰め置きしていないのでご安心ください。